家族信託相談事例:父の認知症に備えた家族信託の活用
ご相談の背景
ご相談者であるAさんは、自身の70代の母親から、75歳の父親が軽度の認知障害(MCI)の疑いがあるとのことで、今後の財産管理に関する相談があり、どうすべきか悩んでいるとのことで当事務所に来所されました。
父親名義の自宅や預貯金の管理方法や、父親の判断能力が低下した後の手続きについて不安を抱えていらっしゃいました。
相談内容
Aさんは、父親の認知症が進行する前に財産管理方法の対策を講じ、財産を円滑に管理したいと考えました。
その手段として検討した成年後見制度は、利用に際しての煩雑な手続きや専門家への費用負担にも懸念がありました。
解決策
当事務所として家族信託を活用することをご提案いたしました。お父様の自宅と預貯金を信託財産とし、お母様を受託者(管理者)に指定しました。
信託契約には、お父様の判断能力が低下した場合でもお母様が迅速に対応できるよう、詳細な管理・運用方法を記載しました。
実行手順
1.信託契約の作成
信託財産の詳細、目的、受託者の権限と責任を明記した信託契約を作成しました。
2.信託財産の管理
お母様が信託契約に基づき、お父様の自宅と預貯金を管理できるようにいたしました。
必要に応じて財産の売却や運用を行うことができるようにするなど、症状の進行具合や家族状況などによって柔軟に対応が可能な形にしました。
3.受益者の保護
お父様の生活費や医療費が信託財産から支出される仕組みを設け、受益者であるお父様を保護できるようにしました。
メリット
1.迅速な対応
成年後見制度を利用せずに、お母様が財産管理や売却を迅速に行えるようになりました。
2.財産の有効活用
信託財産として管理されることで、自宅の売却や預貯金の運用がスムーズに行われ、お父様の医療費や施設費用に充てることができるようにしました。
3.税務上のメリット
家族信託の活用により、自宅売却時の3000万円特別控除など、税務上の優遇措置を受けることができるようにしました。
4.家族の安心感
家族信託の設定により、お母様はお父様の財産を適切に管理でき、将来の不安が軽減されました。
家族信託を検討、進めるにあたっての注意点と対策
1.専門家の助言を受ける
信託契約の作成や運用には専門知識が必要です。司法書士、行政書士、税理士などの相続専門家の助言を受け、適切な契約を作成します。
2.定期的な見直し
家族の状況や法律の変更に応じて、信託契約を定期的に見直し、必要な修正を行います。
3.信頼できる受託者の選定
受託者は信頼できる人を選び、定期的な監査や第三者の監視により不正を防ぎます。
4.受益者のニーズを重視
受益者の生活設計に基づいた信託内容を設定し、将来の生活費や医療費を考慮するなど、必要な資金を確保します。
5.コミュニケーションの確保
受託者・受益者・家族間の定期的なコミュニケーションにより、信頼関係を築き、信託運用の問題を未然に防ぎます。
結論
家族信託は、高齢者の財産管理と相続対策に有効な手段であり、特に認知症リスクがある場合に柔軟かつ迅速な対応を可能にします。
専門家のサポートを受けた適切な信託契約の作成により、家族の安心感を高め、財産の有効活用を実現する為に、早めのご相談をお勧めします。
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